空母機動部隊とは何か−その誕生から今日まで
●5.空母機動部隊の特質と意義

 空母機動部隊は世界的に広がる海洋を利用して、 必要な時に必要な場所に急速に機動展開が可能であり、 また、洋上補給を継続的に実施することにより、 快適な生活空間と十分な戦闘力を長期にわたり維持発揮することも可能であるが、各種支援艦艇を随伴し作戦効率を高める「洋上ロジスティクス」は、日本海軍との死闘から生まれ育ったものであった。また、高速補給装置などは朝鮮戦争でジェット機が出現し、脆弱性な時間である補給時間の短縮、 航空攻撃に備えた部隊の分散などから生まれたものであった。すなわち、朝鮮戦争では武器の近代化にともない補給品目が爆発的に増大するとともに、 電子部品やミサイルなど壊れ易い物品も増加した。 このような要求から多種雑多・多量の補給物品を、 少ない回数で短時間に補給できる大型多目的補給艦、 ヴァートレップと呼ばれるヘリコプターを使った立体的補給、 補給時間を短縮し安全確実に移載する高速自動移載装置などをアメリカ海軍は朝鮮戦争を通じて開発していった。

 次ぎに、空母機動部隊の戦力はどのようなものなのであろうか。アメリカ海軍の空母機動部隊である空母戦闘群(CVBG:Carrier Vessel Battle Group)は、空母とそれに搭載される空母航空団から構成されているので、空母の大小により搭載機数が異なることはない。空母航空団の標準的搭載機数は85機で、その構成は戦闘飛行隊2隊、攻撃飛行隊3隊、対潜哨戒飛行隊1隊、ヘリコプター飛行隊1隊、早期警戒飛行隊1隊、対電子戦飛行隊1隊から構成されている。この航空部隊の破壊力は攻撃飛行隊に属する航空機の搭載量や攻撃目標までの距離、制空権確保に配備する航空機の数などで異なるが、1個飛行隊の定数は24機、1機の搭載量をMK82爆弾12発(2.72トン)とすれば、1個飛行隊で65トン、3個飛行隊で195トン、空軍の場合は1日に2から3回しか出撃できないが、空母の場合は攻撃目標までの距離が近いこともあり、戦例では1日に3から4回出撃しているので、机上の計算では1日の攻撃力(爆弾投下量)は318トンとなる。しかし、忘れてならないのは、ウエル・バランスド・フリート(Well Balance Nacy)の言葉が示す通り、護衛用の巡洋艦、 駆逐艦、 フリーゲート艦、潜水艦や洋上補給艦(給油艦・給弾艦・工作艦)など多種多様な艦艇がバランス良く整備され、対潜戦、 対空戦、 対水上戦、 機雷戦能力、 洋上監視、 哨戒、 情報戦、 電子戦などの各種補助作戦が完全に行われなければ、空母機動部隊としての完全な戦力を発揮できないということである。

参考文献

阿部安雄・戸高一成篇『福井静夫著作集 世界空母物語』(光人社)
『世界の艦船 特集 空母機動部隊』(第370号,1986年10月)
Roger Chesneau,Aircraft Carrier of the World:1914 to Present(Naval Institute Press)


1.空母の誕生と発展
2.空母部隊の発展
3.第二次大戦中の空母機動部隊
4.第2次大戦後の空母機動部隊
5.空母機動部隊の特質と意義