建艦思想に見る海上防衛論―フランス海軍編 |
●はじめに |
一七世紀から一八世紀末までフランス海軍は有能な指揮官と活力ある乗員、優れた艦船を保有し、イギリス海軍と覇権を争う大海軍であった。 そして、帝国主義下の一九世紀には植民地獲得政策を強行に遂行し、フランス海軍が国家発展に大きな役割を果たしていた。しかし、現在建造中の原子力空母にシャルル・ドゴール、 就役中の空母にフォッシュという陸軍軍人の名前が付けられていることが示すとおり、フランスの栄光はナポレオンに代表される陸軍であり、 トラファルガルの敗北後はフランス海軍の栄光を飾る戦勝もなく、第二次世界大戦では敵や味方と戦い全滅するという奇妙な、また、悲惨な結末を迎えて今日に至っている。しかし、一九世紀までは「学術」のフランス、 「技術」のイギリスと言われヨーロッパの科学技術先進国として、フランスの造船技術が世界をリードし、フランス海軍の戦略や戦術が列国海軍に大きな影響を与えてきた。一方、フランス海軍は大陸国家の宿命から国家防衛の主柱となることはなく、青年学派(エコール・ジューヌ)が主張する大陸国家的な海軍戦略を基に海軍力を整備してきが、海外に多くの保護領を抱えているため外洋海軍的側面も保持してきた。このようにフランス海軍は艦隊決戦により制海権を獲得し国家目標を達成するというマハン理論を受け入れることはなかったが、ラテン民族特有の独創性を発揮して極めてユニークな艦艇や武器を開発し装備してきた。本論では国際情勢の変化と、それに伴うフランス海軍の海軍戦略や艦艇建造の変遷をたどってみたい。 |
はじめに 1.近代フランス海軍の創設 2.第一次世界大戦 3.戦間期のフランス海軍 4.第二次世界大戦 5.第二次大戦後のフランス海軍 6.現在のフランス海軍 |