建艦思想に見る海上防衛論―イギリス海軍編 |
●はじめに |
過去、 世界三大強国(日英米)とか、 世界五大国(仏伊を加える)とか呼ばれ、 第一次大戦から第二次大戦間の国際政治を左右したのは陸軍兵力ではなく、 戦艦に代表される海軍力であった。 このように、 戦艦は国力の表徴であり海軍力の骨幹でもあった。 一九〇六年に完成したドレッドノート型戦艦から、 一九四六年に完成したヴァンガード型戦艦までの四〇年間に、 アメリカが三四隻、ドイツが三一隻、 日本が一四隻、 フランスが一一隻、イタリアが九隻、 ロシアが七隻、 オーストラリア・ハンガリーが四隻、 スペインの三隻、 アルゼンチンが二隻、 ブラジルが二隻、 チリーが一隻、 トルコが一隻、 ギリシャが一隻の戦艦を建造したが、 イギリスは五九隻であった。 この五九隻という数字から当時の世界列強の国力や地位、 特にイギリスの国力や地位が列国を大きく引き離し、 イギリスが群を抜く海軍国であったことが理解できるであろう。 しかもイギリス海軍は単に多数の戦艦を建造しただけでなく、 質的にも全ての戦艦を旧式戦艦にしてしまった戦艦ドレッドノートや、 世界のすべての装甲巡洋艦を一挙に時代遅れにしてしまった巡洋戦艦インビンシブル、 さらに航空母艦、 巡洋艦、 駆逐艦、 水雷艇などの新型艦種を次々に建造し世界の海軍をリードしてきた。 本稿では「海洋を制するものは商業を制し、 商業を制するものは世界を制す」とのウォター・ロリーの主張を具現化し、 大海軍を建設して太陽の没することなき世界に冠たる大英帝国を建設し、 七つの海にユニオンジャックを翻してきたイギリス海軍の海軍力の整備が、 どのような戦略・戦術思想で進められてきたのたかを振り返ってみたい。 |
はじめに 一 イギリス海軍の発展とその理論 二 第一次世界大戦までの海軍 三 第二次世界大戦まで 四 第二次世界大戦後の海軍 五 冷戦後のイギリス海軍 六 イギリス海軍の戦い方 おわりに |